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お問合わせ
labo@pan-records.com
Pan Records

戦前ブルース音源研究所

Pre War Blues Laboratories


【盤により複数のTP値が測定されている理由を考える】


パラマウント・レコードを始めとする当時のレコードの溝と溝の間隔TPには、複数の数値が計測されました。

この理由は、録音時間と音圧のバランスでの選択をしていたと想像しております。

しかし、そのエンジニアの作業・操作の資料は現在私達には確認する事が出来ておりません。
あるのは80年前のレコードからの実測数値のみです。

その後ビニール盤時代の作業工程の中でスタンパーよりビニール盤を剝離する工程において
冷却する事で縮む、縮率(熱収縮率)を利用し剝離を容易に行っている作業を知りました。

 融点に近い温度でプレスされたシェラックは、金属製のレコード金型から剝離する時に水冷却による
収縮で巌合部の接面積を減らし型からの剝離を安全に行うという工程です。

TP(Trace Pitch)の微妙な誤差は、この収縮率の誤差ではないのか? 

レコード全体が縮むとTPも縮む。

この縮量でTPの個体差が生じているのではないか? 
という問いに答えるべく実測を行う事になりました。

縮む事で同じ盤でも個体差が起こっているのであれば、異なる盤(曲)では尚更TPが異なるかも知れません。
とすればTPの計測は何の意味もなく素材が冷却や経年変化を起こし個体差が出ているだけと言う事になります。
真相を確かめる為に 実験(測定)をしてみましょう。 



個体差を調べるために、好都合なのが同じタイトル・プレスの複数の盤です。

同じメーカーの同じタイトルであればスタンパーは同じTPの金型のはずですから、
販売された盤にTWの誤差が生じているかを調べる事で確かめられます。

同じタイトルのTW(Trace Width)にも大きな誤差が生じているのであれば、
プレス工程のレコード盤に個体差がある事が証明され、加熱、加圧や冷却時間等の工程に誤差もしくは
レコード素材の物質的性質に誤差があることになります。


また、逆に複数枚の同じタイトルのTWに誤差が起こっていなければTPの計測複数値は
タイトル別の差がやはり起こっていた事の証明になり、カッティングマシンのTPを変更したか、
もしくはTPの異なる複数のカッティングマシンが存在していた事になりましょうか。。


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当研究所 所有 Blind BlakeのSP盤より、同じタイトルの盤を コンディション 別に表記します。
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20582_2 Panther Squall Blues 3枚あります。

(Eコンディションの盤、Vコンディションの盤、Gコンディションの盤の順)

E - TW 58.55      V - TW 58.40        G - TW 58.56         盤によってやはり誤差は若干あるみたいです。



裏面      20559_1 No Dough Blues


E - TW 60.80     V - TW60.70    G - TW 60.85   ほぼ誤差無し 



3057_2 Early Morning Blues

E - TW 69.25                G - TW 69.25        誤差無し


3056_1 West Coast Blues E

- TW 72.2      G - TW72.2   Crack -TW 72.3      E(3057_1とのカップリング)TW72.45  の4枚。 ほぼ誤差無し



カップリング違いで僅かに差があります。

しかし実際にはT200以上ですから、TP誤差は200分の1以下になります。



3073_1 Skeedle Loo Doo
E - TW 70.20        E_ - TW 70.10

3061_2 come on boys
E - TW 62.6       E_ - TW62.55       V+ -TW 62.55


3059_2 Too Tight
V - TW 59.2      G(crack) - TW 59.2      G - TW 59.05  
  

3081_1 Stonewall Street
V - TW 62.055       G(crack) - TW 62.05      G - TW 62.05


20884_1 Cold Hearted Mama
V - TW 57.4        G - TW5 7.1
 

20874_1 Back Door Slam
V - TW 56.1        G - TW 55.8


20871_3 Search Warrant
V - TW 60.2     E - TW      60.25


20888_1 Sweet Papa Low Down
V - TW 65.4     E - TW     65.25

 このレコード盤TWの実測検証は非常に貴重なデーターとなりました。
 最後にもう一つ面白い数値をご紹介致します。


 20884_1 Cold Hearted Mama
V - TW 57.4    G - TW 57.1  同じタイトルで2枚の誤差は0.3mmです。

この裏面は
20874_1 Back Door Slam
V - TW 56.1          G - TW 55.8    これまた両盤の誤差が0.3mm程度です。 




Tの数値も表裏の曲には4Tほどしかないので、ほぼ同じ時間の演奏と言えます、
0.75秒/T程度ですから x4Tで約3秒の演奏時間差です、よって収縮率も実測数値では誤差がありませんでした。

Gコンディションの盤は、Vコンディション盤に比べて 
TWで0.3mm, 全体の直径では250mm÷57=4.38 x 0.3=1.3mm程度 縮んだ事にまります。


今回の検証によって、盤の個体差による縮率はあるもののTP
(およそTW分の200~250T )での誤差数値が極僅かとなるために、
TP計測誤差は別の理由による可能性が高い事が証明されました。



20874_1 Back Door Slam  両盤の誤差は 0.3mm/TW でしたが、
221Tですので 221T ÷ 0.3mm = 0.00135mmTPとなります。


私達が計測しているTP誤差と比べると極々僅かな収縮による誤差であり、
この誤差はTPの検証値には全く影響が無いと考えるべきです。


冷却剝離による収縮率の検証により、同じスタジオであれば 
TP設定の異なるマシンが複数台用意されていたか、TP可変式マシンであったかでありそうです。



時代別に考えると1920年代中期~1930年辺りまでのマーシュ・スタジオや
ジェネットスタジオには、TP可変式マシンがあった可能性が高く、

1930年中後期のヴォカリオンのフィールド・レコーディングなどには
TPの異なる複数台のマシンを使用していた可能性が高いと言えます。


【研究所 菊地】

 


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